脳卒中のリハビリについて
脳卒中におけるリハビリテーションは、脳卒中によって発症した障害をできるだけ改善し、より良い家庭生活や社会生活へ戻ることを目指します。個々の患者さんによって、障害の現れ方や症状は異なるため、症状が同じ患者さんはいないほどです。そのため一様なリハビリの方法は存在しません。専門家である理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などが、患者さんの個々の状況に合わせ最適なリハビリのプログラムを設計します。それぞれの患者さんに合わせカスタマイズされたリハビリ計画が重要となるのです。
脳卒中のリハビリテーションは、さまざまなプロフェッショナルが協力して行います
医師/理学療法士・作業療法士・言語聴覚士/看護師/薬剤師/ソーシャルワーカー/管理栄養士/臨床検査技師
脳卒中のリハビリテーションとは
脳卒中による「麻痺症状」「飲み込み困難」「高次脳機能障害」など
障害に応じて、適切なリハビリテーションを提供します。
麻痺症状 麻痺症状
脳卒中が引き起こすよくある後遺症のひとつに「片麻痺」があります。これは、身体の半分の手足が動かなくなる症状で、歩行や手の動きに支障が出ます。片麻痺に対するリハビリテーションでは、「歩行訓練」や「上肢機能訓練」が必要です。歩行が困難な場合には「下肢装具療法」が行われ、装具によって歩行をサポートし、効果的な歩行訓練を可能にします。これらの装具の選定は症状や状況により最適なものが異なるので、リハビリテーション専門家のアドバイスが重要です。
また、脳卒中後に起こる片麻痺には、筋肉が固くなる「痙性麻痺」もあります。筋緊張が強くなると、日常の動作に支障をきたすことがあります。最近では、この筋緊張を和らげるために「ボツリヌス療法」が使われます。これにより歩行や手や腕の動きが改善され、介護の負担も軽減されます。関節の硬直を予防し、痛みを軽減する効果も期待されます。
主な担当 理学療法士・作業療法士
嚥下障害 嚥下障害
脳卒中の後遺症の一つに「嚥下障害」があります。嚥下障害があると食べ物が正しく飲み込むことができず肺に入り、肺炎を引き起こしたり、食事の摂取が難しくなり、栄養不足を引き起こすことがあります。嚥下障害によるリスクを評価するための検査には、嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査があります。嚥下内視鏡検査では、細い内視鏡をのどに挿入し、食べたり飲んだりしながらのどの動きを観察します。一方、嚥下造影検査では透視室などで、特殊な食べ物や水分に造影剤を混ぜて食べたり飲んだりし、のどの動きを観察します。
主な担当 言語聴覚士
適切な運動を生活に取り入れる 適切な運動を生活に取り入れる
脳卒中後の後遺症の一つとして、「高次脳機能障害」があります。この障害では、言葉の理解や表現が難しくなる「失語症」、空間の半分が見えなくなる「半側空間無視」、注意力の低下で集中が難しくなる「注意障害」、計画を立てたり実行することが難しくなる「遂行機能障害」、感情のコントロールが難しくなる「社会的行動障害」などが起こります。この障害は麻痺などとは異なり、外見からはわかりにくく、職場や家庭でトラブルになるといった問題が生じることがあります。高次脳機能障害に対処するためには、トラブルが起こりにくくなるような適切な環境調整や生活のアドバイスが必要です。
主な担当 言語聴覚士・作業療法士
脳卒中のリハビリテーションは、
それぞれの症状に合わせた方法で改善を目指します。
リハビリには苦痛を伴うものも多く、
長期間の努力が必要です。
自らでできることを少しずつ増やし、
自立した生活を取り戻すことを目指し、
コツコツと努力を続けることが、
最も大切なことです。